2006年05月14日
VOICES---Stan Getz
VOICES---Stan Getz
1966年12月2日録音
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甘く優しいささやき
ムード音楽
このレコードを、ジャズのレコードと言ってすすめたら
嫌われるに違いない。
でも、このレコードの一曲目。
「Once」が流れ出したとたん
僕は身体ごと音楽に引き込まれてしまう。
音楽の魅惑があふれて、その大河に僕は飲み込まれてしまう。
そもそも、ロフト系のソリッドなジャズが好きだった僕は
前にも書いたけれど、Bill Evansも避けて通っていたわけで
Stan Getzも例外ではない。
でも、僕のジャズの原点である
高校の時に通ったレコードやさんで聞かせてもらった
確かルーストのレコード(黄色と緑のツートーンで牛乳飲んでる)は、
僕の心をしっかり捉えていたのを思い出す。
そういうのって、忘れられない何かをもっている。
何年もたってから、その何かを思い出して、「ストーリービル」「シュライン」「カルテット」「プレイズ」と
初期の有名どころをよく聞くようになった。
含んだ柔らかさと、ちょっとくすんだ音色で
躍動感あるアドリブを縦横無尽に吹きまくるゲッツの魅力は他に代え難い。
特に、その柔らかさは、他のサックスプレイヤーにはない、深い深い、ちょっと危険な感じの魅力を持っている。
ある日、「世界の車窓から」という番組を見ていたら
この「Once」が流れた。
もちろん、そんな曲は知らなかった僕だが
画面のクレジットでゲッツの名前を目にする。
ストリングスとの企画盤は
ジャズでは数多い。
もっとも有名なのはバードの「Just Friend」だろう。
ゲッツも「焦点(Focus)」というレコードで成功を収めた。
これは、その二番煎じ、三番煎じ。
「Focus」では、アレンジの良さもあるんだけれども
ゲッツのソロとバックのストリングスが緊張感を保った演奏で、聞いていて、とっても気持ちよい。
ところが、この「Voices」のゲッツのソロは、力なく、つやなく、今にも死んじゃいそうなほど。
聞いているこちらも、どんどん落ち込んでいく感じ。
それゆえ、ゲッツフアンにはいささか評判のよろしくないレコードだったりする。
でも、その優柔不断で根暗な弱々しさが
摩訶不思議なコーラスに重なり、ひとつの世界を作り出している。
そして、その世界は他では見ることの出来ない、類似品のない、強い個性を持った
たぶん、その時代にしかつくりだせなかった、そういう世界なのだ。
その不思議な世界は、冒頭の一音が響いたとたんに、僕を飲み込んでゆく。
こんな音楽はなかなかない。
それも、僕だけがそんなふうに受け止めているに違いない特別のものなのだ、きっと。
音楽について語るときに
共感を求めて語る場合が多い。
でも、そうではなくて、とても個人的な音楽空間について語ること。
この「Voices」というレコードについて、僕が語るということはそういうことだ。
というわけで、僕にとって、あるいは僕だけにとって特別な
一枚のレコードの話でした。
COOL VELVETとの2on1もでている。
こちらの方がお得。
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with Stringsとしてはもっとも有名な「FOCUS」
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<ひとりごと>
こういう音楽に、ぐっとくきちゃうのは
やっぱり年なんでしょうね。
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投稿者 furukawa_yasushi : 2006年05月14日 18:00
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