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2007年01月17日

三月の水---ジョアン・ジルベルト

[音楽--music ]

「三月の水」---ジョアン・ジルベルト
1973年録音
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冒頭のギターのつま弾きからノックアウトされる。
「なんて、こった」
こんなすごいレコードを、今まで知らなかったなんて。

というわけで、昨年暮れからジョアンが私のマイブーム(変な表現ですね)になっています。

ともかく、このレコードですが、「ボサノバ」という音楽を、今まで知らなかったと言っても良いくらいの、目から鱗。
でも、ジョアン自信も、自分のやっている音楽は「サンバ」だと言っているし、音楽評論家の中には、このレコードをボサノバに含めない人もいる。
ということは「ボサノバ」とは何?ということになるんだけれども、
このレコードの前ではそんなことどうでも良いことなのである。

ここにあるのは精巧なミニチュアールの世界だ。
しかし、一部のミニチュアの世界に見られる、細かい部分への偏執狂的な執着心などない。一切の執着から解放された、音と音の絶妙な関係が、繊細な絹糸の縦糸と横糸のようにそこに響く。

ギターの弦はつま弾くと音が出る。
音が出てしまったら、あとは止めるしかない。
出てしまったら最後。
ギターから音を出すことは誰にでも出来る。
しかし、出てくる音が目の前にひとつの形となって
しっかりと現れるように響かせることは誰にでも出来ることではない。
これは、演奏技術のうまい下手ということともちょっと違う。

実はギタリストには、高度な潔さが求められると思っている。
ロックの世界でいえば、キースリチャードのギターなんて良い。

弾いた瞬間、音は演奏者の手から離れる。
もちろん、ビブラートなどの表情を付けたりもするが、
最初のアタックで出た音を変えることは出来ない。
その最初の音こそがギターでは一番大切な要素だと思うし
それを生かす潔さがギタリストには必要だと思う。
昨年、サンディさんのギターを聞いたときに、そう確信した。
Y.A.A.B.@yukotopia

そして、ジョアンのこの潔いギターの響きはどうだろう。

天使の声とたたえられるジョアンだが
私にとっては、希有なギタリストとしてのジョアン、と言う存在なのである。

というわけで、ジョアンのCDを買い集めてる日々、なのである。

GETZ/GILBERTO(af_blog)


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2007年01月17日 12:20

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コメント

すてきな見解を読ませていただきました。

私ならジョアン・ジルベルトと一対一で対面して、
私のためだけに彼のボサノバを聴かせてもらう。
そんな夢を抱きます。

昔、民族音楽研究家の小泉文夫さんに「誰に聴かせたい音楽(演奏)なのか」
その目的で楽器も演奏スタイルも生まれ変わるという話しをききました。
小さな音の楽器は恋人やみじかな家族数人に聴かせるメッセージ、
大きな音の楽器は宗教の説教や王様の権威を主張する。

その話の例として、ベトナム山岳民族が恋人に聴かせる目的で発展した楽器、
ダンバウ(一弦琴)について教えていただきました。
ダンバウについては私のブログ「一弦琴 dan bau」に詳しい説明があります。
http://ysfc.weblogs.jp/chronofile/2005/01/dan_bau.html

ジョアンの歌も大ホールではなく、膝のふれあいそうな空間で聴いてみたい。
そう思います。
ダンバウの弦の音はいつでもお聴かせできますが、演奏が難しい楽器です。

投稿者 栗田 : 2007年01月18日 09:34

GETZ/GILBERTOだけは持ってます。
お勧めはこの三月の水ですか?

投稿者 masa-aki.m : 2007年01月18日 12:46

ギタリストの栗田さまにコメントをいただけて嬉しいです。
ジョアンのギターと声は、まるで自分の目の前で演奏され唄われているように錯覚してしまうのです。
これは、どういうことなんだろうかと、しばし考えます。
彼が紡ぎだす音と音が、確かに私の心にコミットしているからなんでしょうね。
ただし、くっつきすぎてべたべたしていないのが清々とすがすがしい限りです。
きっと、ベトナムのダンバウの音もそのように響くのでしょう。
いつか聞かせていただく機会があると良いですね。

投稿者 fuRu : 2007年01月18日 20:43

masa-aki.mさま
ここだけの話ですが「GETZ/GILBERTO」は歴史的な凡盤だというのが私の考えです。
ゲッツを聞くのにもジョアンを聞くのにも良いところなし、でしょう。
ジョアンを聞くのならば、この「三月の水」を聞いてみて、ビビッと来るかどうかが境目。ある種の試金石のようなレコードかもしれません、そういう意味でもお勧めですよ。
特に、アコースティックギターを弾かれる松原さんでしたら、このレコードの凄さをわかってもらえると思います。

投稿者 fuRu : 2007年01月18日 20:46