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2008年05月14日

「ペット・サウンズ」---ジム・フシーリ (著), 村上春樹 (訳)

[books ,音楽--music ]

「ペット・サウンズ」
著:ジム・フシーリ  訳:村上春樹  出版:新潮社
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G・グールドは1964年3月28日のシカゴ・リサイタルを最後にコンサート活動からは一切手を引き、以後発表される作品はスタジオで録音され編集されたものとなりました。

ビーチ・ボーイズのブライアン・ウイルソンは1964年末のツアーに向かう飛行機の中で、感情の抑制がきかなくなってライブを欠席し、これをきっかけに、コンサート活動への参加を止め、スタジオでの音楽作りに専念することを宣言します。

『ラバー・ソウル』("Rubber Soul")、1965年12月3日にリリース。
『ペット・サウンズ』("Pet Sounds")、1965年5月16日にリリース。
『リボルバー』("Revolver")、1966年8月5日にリリース。

ビートルズは1966年8月29日のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パークのステージを最後に演奏活動を停止し、スタジオでの音楽制作に没頭してゆきます。

レコード(フォノグラフ-phonograph)は1877年にエジソンが発明しましたが、その頃はマイクもありませんでした。マイクの発明は1888年頃と言われています。曲を録音したレコードの発売はその後40年位経ってから。蓄音機は1910年代には普及し始めますが、それが一般的になるのは戦後の事です。
そして、LPレコードが1948年に商品化され、1958年にステレオ録音が始まります。多重録音が可能になるのはもう少し先。
4トラックのマルチトラック録音が出来るようになるのが1960年代半ばなのですね。

録音された音が特別な表現になり得ることを発見した人びとがいます。
グールドもブライアンもレノン=マッカートニーも。
興味深いのは、1965年前後、それらの発見が同時に起こったと言うことです。
もちろん、技術がそれを可能にしたのですが、その技術とくっついてしまったアーティストの魂がそこにあるということ。

この本は、音楽評論家でもあるジム・フシーリがビーチ・ボーイズについて、ブライアン・ウイルソンについて、そして「ペット・サウンズ」について、その特別な思いを書きつづった本です。

「ペット・サウンズ」と言うレコードはかくも特別なレコードである、うんぬん。その思いが伝わってくるとともに、きわめて個人的な音の世界がこうして多くの人の心に深く滲みてゆくという事件を、こうしてCDとなった「ペット・サウンズ」を聴く、今の私も体験しているということが、とても面白いのですね。

訳者の村上春樹は、自分はジム・フシーリ程、このレコードに思い入れはないけれども、とっても大切なレコードであると後書きで語っています。そういえば音楽雑誌「MUSIC MAGAZINE 」の特集でも、60年代、70年代、80年代をとおした投票で一位を取っていましたね。多くの人にとって、とても大切なレコードであることに、間違いはないようです。

<覚え書き>
グールドが演奏活動を停止したのが30歳。ブライアン・ウイルソンがツアーに同行しなくなったのが22歳。ビートルズが演奏活動を停止したのがジョンが26歳、ポールが24歳、ジョージが23歳、リンゴがジョンとおなじく26歳。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2008年05月14日 10:30

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コメント

furuさん、こんにちは。
この本のご紹介ありがとうございます。
残念ながらこれまでビーチ・ボイーズにはご縁がなかったのですが
彼らのサウンドはカリフォルニアの海岸をドライブするにはピッタリ♪
ペット・サウンドというのはまた少し違った雰囲気なのでしょうか?
そういえば、毎年近所でサマーフェスティバルが開催されるのですが
2006年の夏にThe Beach Boysがゲストで出演して大変盛り上がったそうです。
オリジナルのメンバーとは随分違うと思いますが
見に行けばよかったな~と後悔しています。

http://www.cowsill.com/photo_album/displayimage.php?album=159&pos=11

投稿者 かあちゃん : 2008年05月15日 10:05

かあちゃんさま
誰が何を言おうとも
ビーチ・ボーイズとカリフォルニアの青い空は切り離せないと思います。
この「ペット・サウンズ」もしかりです。

投稿者 fuRu : 2008年05月15日 16:01