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2010年01月14日

「西の魔女が死んだ」---長崎俊一

[ゆっくり--slow ,映画・ドラマ・舞台--movie/play ]

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「西の魔女が死んだ」
監督:長崎俊一
amazon

野いちごを摘むシーンが印象的でした。
ひとつぶ、ひとつぶ、大切に摘みとって、丁寧に洗って。
野いちごはジャムになります。

2008年8月公開の日本映画です。
不勉強な私はこの映画のことをなにも知りませんでした。
ずいぶんと人気のある映画だと知ったのはお借りしてきたDVDを見終わったあとです。

映像として丁寧に捉えられた時間が
ひとつぶひとつぶのいちごに込められていました。

私たちが忘れてしまっている時間です。

近代は巨大なエネルギーを使って時間を短縮=合理化してきました。
その変化の中で人間自身は少し変わったかもしれません。
でも、それほど合理化されることはなかった。
社会のシステムと人間自身に少しずつズレが生じてきた。

人間はシステムの中で生きていると思います。
野生の中で生きてゆくことは難しい。
そして、社会のシステムに従い短縮された社会のシステムに従う。
システムは社会を動かすダイナミクスですから、人と人の関係です。
私のもの、あなたのもと、という約束です。
でも、やはりどこかに不自然なズレを感じていてそれが重荷になっている。
でも、システムに従って生きる方が楽な面も多い。
でも、システムに従えずにはみ出してしまう事もある。

私たちは野生の一部に、ちょっと触ってみることで
自分の中のシステムを整えているのかもしれません。
野生の音律に耳を傾けながら調律するように。

森にゆき、海にゆき、風の歌をきき、波と戯れ。

映画の中では濃い霧があらわれます。森からやってきます。
濃い霧は暗黒です。
出口が見つからない。
野生はなにも教えてくれない。

私のものであったサンクチュアリ。
でも、サンクチュアリって誰のもの?
おばあちゃんの土地の中にあるからおばあちゃんのもの。
そうしたルールを確かめて安心するのは社会のシステムの中に生きていることの証。
システムに生きていて安心しながらシステムに嫌悪を感じる、という矛盾。

映画の中で、大切に大切に描かれた時間が矛盾のほころびを包んでくれているようです。

そして、私も言ってみたい
「だっしゅつせいこう」
おばあちゃんの言葉。

素敵な映画をありがとうございます。

「西の魔女が死んだ」公式HP


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2010年01月14日 10:30

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西の魔女が死んだ [DVD]出版社/メーカー: 角川エンタテインメントメディア: DVD 映画版『西の魔女が死んだ』を観た。 twitterで「『西... [続きを読む]

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コメント

映画になってるとは知りませんでした。ボクは何年か
前に本で読みました。
おばあちゃんと孫との関係が良いです。感涙!

投稿者 tak : 2010年01月14日 11:14

tak さま
原作もいいようですね。読んでみたいと思っています。
ちなみに、おばあちゃん役はシャーリー・マクレーンの娘さんだそうです。スピリチュアルですね。

投稿者 fuRu : 2010年01月14日 11:25

見たいと思いながら 見なかった映画です。
見なかったのは 少しおびえたからです。
理由は明確ではないのですが、そんな感じがしたのです。

furuさんのこのエントリーを読んで、それはきっと 「社会というシステムに慣れきれないくせに そこから出る事のできないという矛盾」を 自分の中に感じていたからなのだろうと思いました。
そして、それと対面するのが億劫だったんだと・・・・・。


「私たちは野生の一部に、ちょっと触ってみることで
自分の中のシステムを整えているのかもしれません。
野生の音律に耳を傾けながら調律するように。」


う〜〜んと頷きました。そうなんだろうと思います。
その「調律」ってことが 意外に大切なんでしょうね。

考えてみると沢山の仕事が それを通して「調律」できるような仕事にしていけるなあって思って、少し 楽しくもなりました。
この言葉 大切にさせていただきます。


投稿者 光代 : 2010年01月14日 14:32

光代 さま
コメントありがとうございます。
良い映画ですよ。
是非に!

投稿者 fuRu : 2010年01月14日 14:43

ちょっと日本語が上手すぎるんですよね。
うちの母によく似てますが、そこがすごく違う。

投稿者 nt-lab : 2010年01月15日 08:36

nt-labさんのお母さんも、ひょっとして魔女ですか?

投稿者 fuRu : 2010年01月15日 15:38

映画は知ってましたが見ていませんでした。
本は文庫が出ています。
持っていたのに見当たりません・・・暮れの大掃除でどこかへいってしまったみたいです。

投稿者 iw-jun : 2010年01月16日 17:53

iw-jun さま
今、原作を読み始めましたが
映画も良いし原作も良い。それぞれに違った味わいがあります。両方見ても楽しめますね。

投稿者 fuRu : 2010年01月16日 20:03

あの家はまだ残っていますよ。
暖かくなったらお出掛けになってはいかがですか?

http://www.keep.or.jp/ja/nishimajo/

投稿者 まるやまたかひろ : 2010年01月28日 14:01

まるやまたかひろさま
セットが保存されているのは知っていましたが
貼り付けていただいたリンクをたどって、それが清泉寮のそばにあることを始めて知りました。
ありがとうございます。
それから、Twitterフォローしていただきまして、そちらも感謝。

投稿者 fuRu : 2010年01月29日 02:43