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2004年12月16日

UP,UP AND AWAY---Sonny Criss

[ジャズ--jazz ,音楽--music ]

sonny_riss-upupand.jpg

UP,UP AND AWAY---Sonny Criss
amazon

超有名な名盤で持っていないものはかなりあるのに
こういうのを一枚だけぽつんと持っていたりします。

1967年8月の録音。
同時代的にはマイルスがアコースティックカルテットのクライマックスである「ネフェルティ」へと突き進んでいた時期ですね。そして、セシルテイラーは「ユニット・ストラクチャー」をすでに世に問うています。緊張した時代背景が伝わってきます。
さて、このレコードの共演者は
ギターにタル・ファーロウ、ピアノがシダー・ウオルトン、ベースがボブ・クラウンショ、ドラムスがレニー・マクブラウンという面々。
確か、僕は中古CD屋さんでギターのタル・ファーロウを見て買った憶えがあります。タル・ファーロウは好きですね。
で、何でこのレコードなのかといいますと、何気なく久しぶりに聞いてみたら、このノウテンキさが、実に爽快であったわけなのです。
今年はいろいろなことがありました。漢字一字で「災」というくらい。
そんな年末には、こういうノウテンキな音楽が良いのではないかと、まあそういうわけです。
ある意味、これは僕の一年の総括であり、2005年はここで聞く演奏のようにのびびとした年にしたと思っています。

くわえて、レコードの解説をなんと村上春樹が書いているのです。この解説が、ノウテンキさを倍増してくれます。
村上春樹は、解説でチャーリー・パーカーお父さんの跡継ぎ問題にたとえてアルトサックスプレーヤーを一網打尽にしています。これがまた爽快なんですね。思わず吹き出してしまう。
で、チャーリーお父さんのお葬式の席を舞台に、息子達がああでもないこうでもないとやっている様子にたとえているのですね。
たとえば、長兄はフィル・ウッズ、次兄ジャッキー・マクリーン。長兄は仏の枕元で泣く若い義母に下心を持つような目で見てて、次男はそれに気がつき憤る。そこに、叔父さんであるソニー・スティットがあらわれ、次男をなだめすかせる。新橋の芸者に生ませた隠し子がキャノンボール・アダレイは、そんないざこざなんて関係なく、席にあるおすしをぱくぱく大量に食べている。隣の家の息子がリー・コニッツで、チャーリー・パーカーお父さんが隣のおばさんに生ませたとうわさされている。似ているんですね。
三男がソニー・クリスで、四男がチャールス・マクファーソン。知恵遅れの五男であるルー・ドナルドソンを二人であやしながら兄達の様子にぼやいている。
となっています。詳しくはCD買って解説を読んでみてください。
いやいや、楽しいですよ。

ともかく、今年一年の「災」を払うための、とっておきの音楽。そんな感じでのご紹介でした。

<蛇足ながら>
ソニー・クリスのノテンキさというのは、頭が悪いとかそういうことではない。クリス自身は至ってまじめで、そのまじめな性格がこのアルバムでもいかんなく発揮されている。そういう点でとても好感が持てるノウテンキさなのだが、彼のきまじめさが最後には悲劇を生んでしまったのかなと考えると感慨深いものがあります。クリスの生真面目なジャズ魂に合掌。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2004年12月16日 00:00

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» ソニー・クリス「Go Man」 from hyuma
ゴー・マン ソニー・クリスのアルバムでは本当は「アウト・オブ・ノーホエア」が一番favoriteのですが、このアルバムはなんといってもジャケットが最高ですね!もちろん、一曲目の「サマータイム」をはじめとするスタンダードなナンバーもいいのですが、ベスパにのったお... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年01月29日 09:59

コメント

フルカワさん、こんにちは。渋くていいですねえ〜。わたしも、
ソニー・クリスの泣き節に凝っていた時期がありまして、おそ
らくほとんどのアルバムがあるはずです。いちばん針を落と
したのは、「サタデイ・モーニング」だったでしょうか。いまでも
好きだったアルバムは、CDで買い直して聴いています。
日が暮れてくると、なんとなく聴きたくなって、音楽が流れ
はじめると、なんとなくタバコに火を点けて、サビが流れると
ビールのプルリングを起こしたくなる…というパターンができ
あがってたりしますね。(^_^;

投稿者 Chichiko Papa : 2004年12月16日 16:18

こんにちは
Chichiko Papaさんのブログで
「ジャズ歯医者」
http://blog.so-net.ne.jp/chinchiko/2004-12-01
というのを、くすくす薄笑いで読ませていただいていたので
お好きなのだとは思っておりましたが、コメントをいただけて嬉しいです。
夕暮れにソニー・クリスで缶ビール。何か良いですね。
下落合に似合いそうです。
例の「道に生える木」
http://af-site.sub.jp/blog/archives/000301.html
の真相解明も興味深い下落合周辺ですね。

投稿者 fuRu : 2004年12月16日 16:37

フルカワさん ”Up, Up and Away" の楽しい情報有り難うございます。 お持ちのLP のビクターの番号とリリースの年月日(1980年の何月?)を教えて頂けますと幸いです。

投稿者 osakabe : 2005年07月11日 06:52

osakabeさん こんにちは
村上春樹がライナーノートを書いているレコードは何枚かあると思うんですが
このライナーは秀逸です。笑えます。
僕が持っているのはCDですが
ビクター音楽産業 VICJ-23577です。
まだ売っているでしょうか?中古なら見つかるかもしれませんね。
発売日は1980年5月25日となっています。

投稿者 fuRu : 2005年07月11日 09:12

fuRuさん osakabeです。 情報有り難うございます。 1980年5月25日は LPのリリース日と考えてよろしいでしょうか? 私も某社でCD開発の片棒を担いでおり、CD発売は1982年からと記憶しております。 CD の発売は、ビクターのTKJV-19004 1997年が最初だと思っておりました。 お持ちの 同じビクターの VICJ-23577の再販になるようです。 大変参考になりました。 村上春樹氏の著作に関するウェブサイトにライナーノートも取り上げようとしております。 今のところ、8種類のライナーノートがあるようですが、このLP/CDの解説は笑わせてくれます。 また、どうぞ宜しくおねがいいたします。

投稿者 osakabe : 2005年07月11日 10:37

osakabeさん
発売年を間違っていました。
1991年です。ごめんなさい。
1991年の5月25日発売のCDです。でも、1997年よりも前ですね。
村上春樹のライナーは1980年のLP発売時のものと書かれていました。

投稿者 fuRu : 2005年07月11日 10:50

fuRuさん osakabeです。 お手数をおかけしました。 有り難うございます。 1997年のCDのライナーのコピーを持っておりますが、1991年のものをそのまま使っているようです。 、[1980/村上春樹] と「本解説はLP発売時のものを使用しております」と書かれておりました。 もし、LP ビクター SMJ7491 のリリース月日をご存知でしたらお知らせ下さいますようお願いいたします。

投稿者 osakabe : 2005年07月11日 13:21

osakabeさん
残念ながらこのレコードのLPのリリースについてはまったくわからないです。

投稿者 fuRu : 2005年07月11日 15:43

こんにちは
「mirukoの時間」ココログのakeminです。
50年代VERVEが誇る、速弾きなどの超絶テクニックをはじめ、全盛期のグルーヴィーな好演で人気があった白人ギタリスト"タル・ファーロウ"について書いています。よろしかったら見に来てください!

投稿者 akemin : 2006年01月07日 23:02

akeminさん はじめまして。
タルは、僕もとっても好きなギタリストです。
特にヴァーブの二枚は愛聴盤ですね。
このクリスの競演盤は
カムバック後の演奏で、若きヴァーブの頃のみずみずしさはなくなっていますが
とっても渋いバッキングに回っていて
そんなタルの好サポートもこのレコードの魅力の一つです。

僕もタルの記事をそのうちに書こうと思っています。

投稿者 fuRu : 2006年01月08日 10:17