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2007年11月16日

「村上春樹にご用心」---内田樹

[books ]

「村上春樹にご用心」
著:内田樹 出版:アルテスパブリッシング
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こんにちは。
自称、村上ファンの古川です。
しかしですねえ、村上春樹についてかかれた文章で
今までしっくりときたものがひとつもなかったって、どういうことでしょうねえ。
それがですね、このウチダさんという方の書いたもの、
実にしっくりと来るんですね。
村上春樹の原稿流出事件をきっかけに
ウチダさんのブログの記事を
わきた・けんいちさんに教えてもらって読んだのが最初でしたね。
父の不在
いやあ、的確に村上春樹の世界を言っておられた。
そのウチダさんのブログで村上春樹についてかかれた文章を中心に編集されたのがこの本というわけです。
これが、面白くないはずがない、わけですね。

特に「風の歌を聴け」について
キーワードの羅列だけでこれは文学ではないという批判が多いのですが
それに対して、キーワードの配置によっていくつかの空間が点描的に描かれていて、それぞれの空間が微妙にずれているという事によって、「私」と言う現象が分裂する、いやいやそもそも分裂している「私」というものを小説空間で表現しているのが、この「風の歌を聴け」なのだ、という話に、今までもやもやしていたものが氷解する気分でした。すっきりするなあ、もう。

それから、翻訳というのは、作者の頭と自分の頭を付け替えるのではなくて、作者の身体と自分の身体を付け替えるというところにも、うんうんとうなずくものがあります。
つまり、創造というものがどこで行われているか、どこで起こっているかという事なんですけれども、それは、頭の中だけでも身体だけでもないわけで、そのへんのことが翻訳という事を通してあぶり出されているのだと思います。

というわけで、とっても面白い本でした。

<蛇足>
面白い面白いと飛ばして読んでもいられないのがこの本の奥深さ。
実に深い深い論考が、各所に点在しておりまして、考えさせられる事多しです。
これも面白い本の条件ですね。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2007年11月16日 10:00

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コメント

furuさん、こんにちは。
ちょっと前の本だけど、「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」は読みました?
主に「ねじまき鳥クロニクル」についてですが、河合隼雄さんを前にして、本人がとてもリラックスして素直に語っているように思え、それから村上春樹の本がとても読みやすくなりました。
この本も読んでみますね。

投稿者 hama : 2007年11月16日 12:24

あっ、やはりアップされましたね。
僕はなかなか時間がなくて・・・(^^;;。
できたら、そのうちにとは、思っています。

投稿者 わきた・けんいち : 2007年11月16日 13:46

fuRuさん、著者の内田さんについて、最近の『アエラ』にインタビュー記事が載っています。

投稿者 わきた・けんいち : 2007年11月16日 13:49

hama さま
「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」もちろん読んでいますよ。
たしかに、いつになく自然体の村上春樹がでていて
読んでいる方もここちよい感じにつつまれますね。
ちなみに、この本は斜に構えているところがあるので気をつけて読んでください。

投稿者 fuRu : 2007年11月16日 14:31

わきた・けんいち さま
お待ちしておりますね。
この本は、かなり刺激的な内容をさらりと書いているところが多くて、時々ひやりとさせられます。それだけでも、面白い本ですね。

アエラ、ちょっと立ち読みしてみようかな。

投稿者 fuRu : 2007年11月16日 14:32

面白そうな本ですね
読んでみようっと!

投稿者 u-och : 2007年11月19日 18:14

やっぱり村上ファンのu-ochさんこと落合さん
こんにちは
この本は、面白いです。
ほんとに面白い。
いやいや面白い。
とっても面白い、です。

投稿者 fuRu : 2007年11月19日 23:19