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2005年01月19日

Explorations---Bill Evans

[ジャズ--jazz ,音楽--music ]

Explorations---Bill Evans
1961年2月2日録音
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スコット・ラファロ、ポール・モチアンとのファーストトリオのスタジオ録音は
1959年の「Portrait In Jazz」とこの「Exploration」の2枚しかありません。
良くビルエヴァンスの入門として、ヴィレッジヴァンガードでのライブである
「Waltz For Debby」や「Portrait In Jazz」を勧める人がいますが
僕だったらこの「Exploration」を、真っ先におすすめします。
それくらい、このレコードは完成度の高いレコードだと思います。
聴けば聴くほど、じわーっと凄さが身体に染みてきます。
一瞬のひらめきのように、突然 今まで見えていなかったものが見えてきたりもします。
そんなレコードには、なかなかお目にかかれない。ほんとうに素晴らしいレコードです。

たぶん、1959年の12月(「Portrait In Jazz」)から14ヶ月間もレコーディングをせずに
ずーっと、ライブハウスでの仕事を通して、自分たちの音楽を練り続けていたんでしょうね。
そして、やっと次の「新しいもの」が録音できると確信して初めてスタジオに乗り込んだのでしょう。
14ヶ月の時間がこのレコードの準備に必要だった、そのくらいのものを感じます。
それにしても「Portrait In Jazz」を、およそ一ヶ月の準備で録音したのとはエライ違いですね。

以前、ビルエヴァンスがマイルスの「Kind Of Blue」の録音にのぞむ直前のレコードということで
Everybody Digs Bill Evans」をエントリーしたのですが
実は、ほんとうの直前の演奏は「Green Dolphin Street」に収められたものになります。
ところが、この録音はチェット・ベイカーの「CHET」の録音が終わったスタジオの居残り組みで、余興的に録音されたものでした。余興といっても、実際にこのレコードを聴けば、その演奏の素晴らしさに圧倒されます。でも、事前に十分な準備がされた演奏ではないということで、ビル・エヴァンスは、その発売を中止させた、そんないわく付きのものなのです。事実、録音したリバーサイド(レコード会社)の1979年の倒産の時に発売される事になった時も、それに対してもビルは不承不承で認めたといわれています。

ビル・エヴァンスは時々完璧主義者であるといわれます。
それは、「Portrait In Jazz」のジャケット写真に写っているサラリーマンのようないでたちが想像させるようなものではないでしょう。
ジャズの即興演奏はもともと「ルーズ」なものです。逆に、「ルーズなもの」が「ジャズ」であるというとらえ方をする人も多いでしょう。
しかし、ビルにとっては、何が「ジャズ」かということではなくて、自分がやる「音楽」とはなにか、と言う問い掛けだけがあったのではないでしょうか。
そのために、「練習を積んだ即興演奏」をやり続けた。そして、自分の世界を広く世に問うことができるレコードというものの存在がとても重要になっていったのだと思います。

ビルはジャズピアノの可能性に心引かれ、生涯ずっとピアノにむかっていた。
それは「ジャズ」の可能性に自分の「音楽」を見つけたからにほかありません。
だから、ビル・エヴァンスはジャズという世界で、特別な存在になりえたのでしょう。

投稿者 yasushi_furukawa : 2005年01月19日 09:43

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