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2005年02月26日
In Praise of Dreams---Jan Garbarek
In Praise of Dreams---Jan Garbarek
2004年ECM
→amazon
北欧のテナーサックス奏者Jan Garbarek(ヤン・ガルバレク)が昨年発表した最新作。
第47回グラミー賞のCategory 45 - Best Contemporary Jazz Albumにノミネートされた。ちなみに受賞したのはBill Frisell のUnspeakable。→詳しくはHMV
ここで聴かれるのは、テナーの音とビオラの音が優しくかさなりながら「そこにある」、そんな音楽。
僕とヤンとの出会いは、友人が持っていたEventyr(→amazon)という名のレコード。このレコードで僕はECMレーベルを知り、ヤン・ガルバレクを知り、ジョン・アバークロンビーを知った。1980年12月の録音。ECMのレコードナンバーは1200だ。
北欧の冷たく凍えた大地をはるか遠くまで見渡す。その先にある地平線は憂鬱に低く垂れ下がった灰色の雲と交わる。ヤンの吹くサックスの音は、そんな情景を想起させてくれる。
新潟で生まれ育った僕にとって「冬」というものはそういう「情景」にぴたりと身を寄せあうようにかさなりあう。彼の吹くサックスの音を初めて聞いたときから、僕は彼の音に引き込まれていた。
というわけで、僕の学生時代のアイドルの一人はヤンだった。輸入盤や中古で彼のレコードを見つけてきては買いあさり、聴きあさっていた。1980年代前半の話。
でも、ヤンはキースジャレットのヨーロピアンカルテットの一員としてすでに有名だった。1977年に録音されたキースの「マイソング(→amazon)」はヒットし、ラジオでテーマソングにもなっていた。そして、実は僕もラジオから流れるヤンの音を聞いていたのだ。ヤンの名は知らなくても。
しかし、Eventyrで聴く事が出来る音楽は「マイソング」の世界を超越していた。僕にとっては。
ヤンはその後、ECMを代表するアーティストとなる。ECMのカラーを強烈に印象づけるアーティストの一人だ。
1990年に「I TOOK UP THE RUNES」で、まだジャズ界では無名だったドラマーmanu katche(マヌ・カッチ)と初共演。今回のCDでも共演している彼のドラムは、とてもスケールの大きなリズムを生む。ドラムというのは面白い楽器だ。ベースについても言えるのだが、演奏の技術という事を超越して、スケールの大きさが演奏にでてしまう。演奏者が何を感じて楽器から音を出しているのかが聴く側にストレートに伝わってくる。それは、音域が低いという事とも関係があるのだろうけれども、音楽が持っている原初的な「なにか」をドラムとかベースは持っているからだと思っている。
そんなスケールの大きなドラムをバックに、ヤンはビオラ奏者でクラシックの世界では有名であるところのKim Kashkashinaと、今回のCDで共演している。ビオラとテナーサックスという音域の近い楽器は共演がむずかしいと思うが、ここで聴かれる演奏からは、そんなむずかしさは聴こえてこない。あくまでも、やさしくやさしく二人の音は透明にかさなリながら、音楽の絹糸を紡ぎ出している。
常に変わらない世界を持っているヤンであるから、毎回の録音に「変化」を求めるほうが間違っているのだろう。いつもながらのヤンの世界がそこにある。そして、僕は、何度でもそこに引き込まれる。
心やすまる1枚。
投稿者 yasushi_furukawa : 2005年02月26日 21:22
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コメント
そうですか、北欧と新潟ってシンクロする部分があるのですね。fuRuさまのエントリー読んで、気持ちが遠く冷たく凍えた大地まで飛びました。九州うまれの私にはただただ想像あるのみですが。
私が今聞き込んでいるCDは新潟っていうより、アイヌの北海道って感じ。いや、もっと上、樺太かな。
投稿者 some ori : 2005年02月26日 22:11
some oriさん こんばんは。
雪に埋もれる冬というものは、なかなか説明できるものでもないし、説明しても、理解してもらいにくいものかもしれません。
僕だって九州の空の色はよくわかりません(残念!)。
僕が、ヤンの音に感じる情景は、昔「ブロンテ姉妹」という映画があって、イングランドの寒々しい草原にみぞれが降っているようなシーンがあったんだけれども、その情景に近いかもしれません。
ちなみに、新潟の冬はさながらブリューゲルの絵画のようです。
投稿者 fuRu : 2005年02月26日 22:52
ブリューゲルの「雪中の狩人」ですね!!!ますます思いが遠くに飛んできます!
アートはこうして世界旅行に連れてってくれる。宇宙にも天にも。すごいねー。
投稿者 some ori : 2005年02月27日 00:05
some oriさん
ブリューゲルの「雪中の狩人」といえば
タルコフスキーの「鏡」です。
どちらも、観るたびに心がふるえます。
投稿者 fuRu : 2005年02月27日 00:24
ヤンを聞きながら帯を織りました。
染めながら、織りながらエンドレスでリピートです。
内にひそむ無尽蔵な豊かさみたいなもの、、、
その辺がテーマかな。
トラバのあまりの速さに驚きつつ、、、、
投稿者 some ori : 2005年03月09日 01:26
>トラバのあまりの速さに驚きつつ、、、、
ははは、ほんとそうですね。
まるで、事前に打ち合わせしているみたいです。
これもブログの面白いところでしょうか。
というわけで、someoriさんにヤンは気に入っていただけたようでなによりです。
投稿者 fuRu : 2005年03月09日 20:48