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2005年02月21日

新シルクロード 第2集--トルファン

[報道・TV--topics ,旅--travel ]

NHK「新シルクロード第2集--トルファン」を観た。
ベゼクリク千仏洞第15号窟の壁画の復元再生を追う一時間。
それにしても、この一時間にどれだけの歴史が詰め込まれていたのか。

上の写真は10年前に訪れたベゼクリク千仏洞。
あまりにも「何もなかった」ことに唖然として帰ってきた僕ら。「莫高窟よりはまとも」と、当時の日記には書き留めてあるが、あまりにも多くの部分が「そこになかった」ことには驚いていた。わずかに残された部分を間近に見ることが出来たことに僕らは感動していた。10年前のことである。


↑高昌故城にて

9世紀にモンゴルの草原で暮らしていた騎馬民族によってつくられた西ウイグル王国は、火焔山の麓の高昌故城を拠点として栄える。交通と交易による経済的な発展とともに、多様な宗教が共存していた時間と空間。その時間と空間がベゼクリクの壁画をうんだ。

20世紀の探検隊の手による多くの壁画の流出と流失。
それは単なる略奪ではなかったと、ル・コックの言葉が紹介される。
20世紀初頭のトルファンを始めとするシルクロードの地域はすでにイスラム教が中心となっていた。イスラム教徒にとって仏教壁画は忌み嫌う偶像として破壊の対象となった。あるいは、価値のないものとして扱われていた。そんな状況におかれていた美しき壁画の数々。埋もれていた壁画の数々。これを守るためには「そこ」から持ち出さなくてはならなかった。
なるほど、井上靖の「敦煌」に通ずるものがそこにはある。

ところが、そうして持ち出された壁画は数奇な運命をたどることになる。
一部は、その直後のヨーロッパ全土を巻き込んだ世界大戦の戦火に遭い失われる。また、日本の大谷探検隊が持ち出したものの一部は、太平洋戦争中に韓国に移されて現在に至っている。
そのように世界に散っていった断片。この数奇な運命。そこには大きな歴史のうねりを感じる。番組はそのうねりを淡々と語る。

ていねいに世界から断片は集められ、様々な検討を重ねて壁画は復元再生された。
完成した壁画は実に美しいと思った。
この壁画を産んだ西ウイグル王国の、多様なものを認め共存する文化の土壌が、この世界の「過去」にではあるが実際に存在したことを、番組を見終わってゆっくりと考えている。

トルファンの記事
葡萄小屋
アイディン湖
結婚式

<「新シルクロード」の記事>
○第10集--12月11日「西安 永遠の都
○第9集--11月20日「カシュガル〜千年の路地に詩(うた)が流れる
○第8集--10月16日「カラホト 砂に消えた西夏
○第7集--9月18日「青海 天空をゆく
○第6集--6月19日「敦煌 石窟に死す
○第5集--5月17日「天山南路 ラピスラズリの輝き
○第4集--4月17日「タクラマカン 西域のモナリザ
○第3集--3月20日「草原の道 風の民
○第2集--2月20日「トルファン 灼熱の大画廊」
○第1集--1月2日 「楼蘭 四千年の眠り

投稿者 yasushi_furukawa : 2005年02月21日 01:20

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トラックバック時刻: 2005年08月04日 18:58

コメント

こんばんは!私、今晩ちょうど第一集をDVDで見てました。それで番宣部分を見て、あ、今日第二集のやってるなって思ってたら!
死者を葬ったり、仏の絵を描いたり、そういう人間の魂の根源みたいなもの、たぶん今を生きる自分などに一番欠けていると思います。何より大切なことなのに。どうすれば取り戻せるのでしょう。

投稿者 some ori : 2005年02月21日 02:32

some oriさん こんにちは
>どうすれば取り戻せるのでしょう。
そうですね。答えになっていませんが、僕は、そうしたことは時代を超え現代のこの社会においてもちゃんと生き残っていると思っています。

投稿者 fuRu : 2005年02月21日 09:54

トラックバック有難うございます。
私のささやかな「新シルクロード」のブログにも、「トルファン灼熱の大画廊」が放映されてから短時間に多くのアクセスがありました。
シルクロードに興味を持つ人が実に多いと実感します。

投稿者 et-eliot : 2005年02月21日 10:08

et-eliotさん こんにちは
et-eliotさんのブログはこの「新シルクロード」専門です。
http://blog.goo.ne.jp/et-eliot
リンクさせていただきました。

投稿者 fuRu : 2005年02月21日 10:42

そうですねー。レンズとハートがくもってるのかも。磨かなきゃ。

投稿者 some ori : 2005年02月21日 12:57

some oriさん
>レンズとハートがくもっている
良い表現ですね。
僕もレンズとハートを磨かないとと思っています。
ブログにこうして文章を書くことも良い刺激になっていますね。
some oriさんもいっしょではないでしょうか?

投稿者 fuRu : 2005年02月21日 13:05

はじめまして。トラックバックありがとうございます。
自分ではマイナーな話を書いていてつもりが短時間に3つもトラックバックをいただいてびっくりしております。
私が思っていた以上に「新シルクロード」は話題になってるんですね。
でももというか案の定というか、その中には主婦の方はいませんでした。私のまわりの友人たちも誰も話題にしませんし。シルクロードって主婦には人気ないんでしょうかね。でもこんなにいい番組ですから、もっとたくさんの人に見てもらいたいな、と思いました。
コメントがシルクロードからかけ離れた内容になってしまいました。すいません。

投稿者 OZAKU : 2005年02月21日 20:35

OZAKUさん こんにちは
>主婦には人気ないんでしょうかね。
いやいや、僕らが10年前に行ったときには
トルファンまでは日本人の奥様方もたくさんおられましたよ。
ブログを探していると主婦のシルクロード好きを発見できるような気がします。

投稿者 fuRu : 2005年02月21日 22:11

こんばんは、frugelです。
シルクロード関連の写真いろいろ拝見させてもらっています。私も機会があれば行ってみたいです。トルファンへは相当時間がかかるんでしょうね。近くまで飛行機で行けるのかもしれませんが、私は北京からの列車のほうを考えてしまいます。

投稿者 frugel : 2005年02月27日 01:14

frugelさん こんにちは
トルファンへの最短はウルムチまで飛行機で飛ぶ方法でしょうが
列車の旅を僕もおすすめします。
ただ、北京よりも上海からの方が良いような気もします。
その違いは「何となくそう思う」程度ですけれども。
列車の旅は良いですね。
北京からでも上海からでも三泊四日の長旅になるのですが、時間が許せば途中のシーアンやランチュウで降りるのも良いと思います。
僕らはシーアンから列車に乗って敦煌の入り口であるリュウエンまでゆきました。寝台車の切符が買えなくて、最初の夜は硬座という堅い座席で寿司詰めの車内で一夜を過ごしました。その経験もすごかった。一夜明けたランチュウで寝台車の席が空いたのでそちらに移動しました。その落差たるやすさまじいものがありましたが、寝台車は寝台車で大金持ちの石油商人や中国人の若いカップルと知り合いになれてよかった。
僕らはそのたびの途中で、知り合いになった中国人のカップルを訪ねてコルラに寄ったのです。
そのへんの話はホームページの旅行記を読んでください。

投稿者 fuRu : 2005年02月28日 00:55

こんばんは、fuRuさん。
私も過去の2度の中国旅行は、いつも寝台列車を使いました。中国の人と交流ができるのは楽しいものです。それにしても、3泊4日ですか。長いですね。行って帰ってくるだけで休みがなくなりそうです。

投稿者 frugel : 2005年03月02日 00:22

frugel さん こんばんは
>3泊4日ですか。長いですね。行って帰ってくるだけで休みがなくなりそうです。
今は、その先のカシュガルまで列車は行っていますから、北京、上海からカシュガルまで直通で行けるのではないでしょうか。そうすると四泊五日、もしかしたら五泊六日なのかな。
日本にいたのでは考えられない旅ですよね。
そういえば、ブルートレインが三月のダイヤ改正でなくなるというニュースをやっていましたね。「はやぶさ」だけは残るのかな。ちょっとよくわかりませんが、寝台車の旅は捨てがたいものがありますね。

投稿者 fuRu : 2005年03月02日 00:49

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