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2008年01月31日
「また会う日まで」---ジョン・アーヴィング
[books ]
「また会う日まで」
著:ジョン・アーヴィング 訳:小川高義 出版:新潮社
上→amazon、下→amazon
これは、ジャック・バーンズとその母の物語。
これは、ジャック・バーンズとその父の物語。
そして、
ジャック・バーンズの父の罪の物語。
そして、
ジャック・バーンズの母の罪の物語。
この本は、人の罪について語り続けます。読み終わった後も。
ジョン・アーヴィングの一番新しい小説(2005年)の邦訳が昨年暮れに出ていました。
邦訳が必ず、ちゃんと出るというのは、アーヴィング人気の表れでしょう。
今回の本は作者も明言する、最も長い小説になっています。
私は、暮れから年をまたいで読了。
読み終えた時に、どこから来るともしれぬ、胸の痛みを覚えました。
アーヴィングの小説には、いつも痛みがあります。
今回の痛みは、一方通行ではなく
双方からの痛み。
逃れられない痛み。
しかし、運命に従わなくてはならないという無気力な痛みではなく。
主体的な痛み。
主体的に我が身に引き受ける痛み。
こういう痛みを描くためにアーヴィング自身も、痛みを抱えています。
アーヴィングの小説は、「オーエンのために祈りを」以降、変わったという人が少なくありません。
私もその変化を感じるのですが、何が変わったのだろうかと、いつも考えています。
「サーカスの息子」や「未亡人の一年」をまだ読んでいませんが、
この本を読んでみて、やはり、「寓意」から「写実」へと、その描写の手法が変わってきていると思いました。
そして、この変化は、村上春樹の「ノルウエイの森」以降の変化に共鳴していると思いました。やはり「寓意」から「写実」へと表現方法を移行させたこと、しかし、それは、ただの「写実」ではなく、「寓意」こそが「写実」であるという視点を持ったものです。
アーヴィングも村上春樹も、「寓意」でしかない世界、そこで生き続ける我々の姿を「写実」として描くために、「寓意」と「写実」の位置関係を探ります。
痛みも「寓意」を伴ったものです。もちろん「写実」として、実際としても痛いとうことはありますが、我々の想像は様々な痛みを「寓意」として持っている。それは、記憶の彼方と重なり、我々の今に迫ってきます。
それゆえに、逃れられない痛みがこの本にはあって、読み終えた時の悲しみは、何か別のもう一つの感情に変質しているような感覚がここにはあります。それは、人が悲しみや痛みをどのように受け入れてゆくのかという大きな問題にこの本が正面から取り組んでいるからに他ならないのだと思いました。
素晴らしい、一冊。
父であり、母であり、子供たちである、みなさんにお勧めします。
<蛇足>
この本は「海辺のカフカ」に呼応していると思いました。
○ジョン・アーヴィングと村上春樹
<過去の記事>
○The World According To Garp----John Irving
○「ホテル・ニューハンプシャー」---ジョン・アーヴィング
○「サイダーハウス・ルール」---ジョン・アーヴィング
○「オウエンのために祈りを」---ジョン・アーヴィング
※新しいホームページで情報更新中!!
投稿者 furukawa_yasushi : 2008年01月31日 10:20
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コメント
しがないテリッピーの一員として是非読まねばなりまcenね。
投稿者 cen : 2008年01月31日 17:39
cen さま
この本こそ「テリッピー」の本。
なにせ、主人公が「テリッピー」なのですから。(^_^)
長い長い本で、なんと上下そろえると5000円もしますが
図書館で借りて、ぜひ読んでくださいませ。
投稿者 fuRu : 2008年01月31日 17:47
furu様
ご無沙汰です。
チェックはしているのですが、なかなかコメントせず・・・
ロム専になっておりました。
着々と進む老眼!?で、読書量もスピードも減速気味。
最近は特に軽い読み物にはしってるかも。
しかし、5000円はきついよね (>_<)
ちょっとがんばってトライしてみようかな。
それでは又。
追伸
「未亡人の一年」はけっこう好きでした。
投稿者 mac : 2008年02月01日 11:43
macさま
ご無沙汰、と言うか、忘年会でお会いしていますしね。
何だかそんなに、ご無沙汰という感じもしませんが
amazonで調べると、すでに古本がマーケットプレイスで出回っておりますね。
上巻は半額くらいのもありました。
5000円はきついから、そのへんでいかがでしょうか?
読んで損はない、というと変ですが、深みのある小説だと思います。
お勧め。
次のアーヴィング、何を読もうかなと思っているのですが
そうですか「未亡人の一年」良いですか。
評判、良いですよね。私の方はそっちに挑戦してみようかしら。
投稿者 fuRu : 2008年02月01日 11:53