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2004年09月16日

「アフターダーク」--村上春樹

[books ]

「アフターダーク」 村上春樹 著
講談社 ISBN 4-06-212536-6 定価 1400円(税別)

そして、ぼくは本を閉じ、その余韻に身を預ける。
こんなに美しいラストシーンは見たことがない。
さまざまなイメージが重なり合い
僕らは最後に美しいラストシーンと出会う。
(注意--本文引用多数あり)

ひとつのベットで寄り添うように朝をむかえる姉妹。
こんなに美しいラストシーンは見たことがない。
「見たことがない」・・・?
人と人のあいだにある深淵。距離。孤独。
距離を超えてかさなること。
さまざまなイメージが重なり合い
最後に僕らは美しいラストシーンに出会う。

--新しい情報を送り、古い情報を回収する。
新しい消費を送り、古い消費を回収する。
新しい矛盾を送り、古い矛盾を回収する。--
そんな都市のなか。
さまざまな孤独。
かさなる人と人。かさならない人と人。
「われわれ」という不思議な視点から眺める世界。
「われわれ」は見ることが出来るが関与することは出来ない。

--「人はそれぞれに違うということ。たとえ兄弟であってもね。」--

--「君とはなぜか話せる。」
「私とはなぜか話せる。」--

テレビの中に閉じこめられる浅井エリ。
寓話ではなく、比喩でもなく。
「われわれ」は見ることが出来るが関与することは出来ない。
テレビという装置がもたらしたもの。
眠り続ける姉。
テレビという視線にからめとられた意思、意識。

殴られる中国人の少女。
--「問題あるよな。そいつ」--

ジャン・リュック・ゴダールの「アルファヴィル」

--「アイロニーって?」
「人が自らに属するものを客観視して、あるいは逆の方から眺めて、そこにおかしみを見いだすこと」--

--「情愛とアイロニーを必要としないセックス」--

--ラブホテルで中国人の娼婦を買う男には見えない。ましてやその相手を理不尽に殴打し、衣服をはぎ取って持ってゆくようなタイプには見えない。でも現実に彼はそうしたし、そうしないわけにはいかなかったのだ。--

白川の妻が頼むローファットの牛乳。
高橋が絶対に手にしないローファットの牛乳。

--「何かを本当にクリエイトするって、具体的にいうとどういうことなの?」
「そうだな・・・音楽を深く心に届かせることによって、こちらの身体も物理的にいくらかすっと移動し、それと同時に、聴いている方の身体も物理的にいくらかすっと移動する。そういう共有的な状態を生み出すことだ。たぶん。」--

音楽から法律の世界へ。マリに語る高橋。
--「一人の人間が、たとえどのような人間であれ、巨大なタコのような動物にからめとられ、暗闇の中に吸い込まれてゆく。どんな理屈をつけたところで、それはやりきれない光景なんだ」--

公園で浅川エリのことについて会話する、マリと高橋。
--「たとえば・・・、彼女は君ともっと親しくなりたいと思っていた」
「私と親しくなりたい?」
「彼女は君が自分とのあいだに、意識的に距離を置いているみたいに感じていた。ある年齢を過ぎてからずっと」--

--「要するにさ、ぼくが何を言ったところで、それは彼女の意識には届かないんだよ。」--

中国人の少女について語るマリ。
--「でもね、ほんの少しの時間しか会わなかったし、ほとんど話もしていないのに、今ではなんだかあの女の子が、私の中に住み着いてしまったみたいな気がするの。彼女が私の一部になっているような。」--

かさなる人と人。なかなか、かさならない人と人。

自分のことについて語る高橋。
--「つまりさ、一度でも孤児になったものは、死ぬまで孤児なんだ。」--

カオルの過去。コオロギの過去。高橋の過去。

「逃げ切れないよ」。
言い表せない不安を招く言葉が、置き去りにされた携帯電話からこぼれる。
都市の通奏低音。いや、現代の通奏低音。

--「ねえ、僕らの人生は、明るいか暗いかだけで単純に分けられているわけじゃないんだ。そのあいだには陰影という中間地帯がある。その陰影の段階を意識し、理解するのが、健全な知性だ。そして健全な知性を獲得するには、それなりの時間と労力が必要とされる。」--

マンションのエレベーターに閉じこめられた、エリとマリの子供の頃の思い出。
かさなる二人。離れてゆく二人。
--「私たちが心を重ねあわせ、隔てなくひとつになれた瞬間。」--

朝の訪れ。都市に埋没するわれわれ--「集合体の名もなき部分」--
ベットで寄り添う姉妹。
鮮やかな光の筋。朝の光がまぶしい。

そして、ぼくは本を閉じ、その余韻に身を預ける。

カーティスフラーの「ファイヴスポットアフターダーク」

投稿者 yasushi_furukawa : 2004年09月16日 11:00

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コメント

こんにちは古川さん
落合です。

僕も村上春樹の小説が好きです。
今、子供が買ってきた
「ハリーボッター」を読んでいますが、
今度の日曜日に「アフターダーク」を読もうと、
本屋で買って家に置いてあります。
まっさらな状態で読みたいので、
実は古川さんのコメントは読んでいないのです。
ネタバレは厳禁ですゾ

ps:古川さんのブログにリンクを張りました。

投稿者 落合雄二 : 2004年09月16日 16:25

村上ファンの落合さん
アフターダーク、なかなか良いですよ。
読み終えたらぜひご自分のブロッグに感想を書いてください。
トラックバックさせてもらいます。
それから、ネタバレに最善の注意を払わねば、と思い
構成を変えました。

投稿者 古川泰司 : 2004年09月16日 18:39

はじめましてMOKと申します。

トラックバックありがとうございました!
村上作品はいつもですが、
今回の『アフターダーク』は特に様々な角度から読める作品だなーと思いました。

上の萩の写真もきれいですね。
萩って、名前から勝手に
もっとひっそり咲くものと思っておりました。
艶やかですねーー(^-^)

投稿者 MOK : 2004年09月17日 13:39

MOKさん
コメントありがとうございます。
アフターダークの世界は
「海辺のカフカ」では、ちょっと違和感があったいくつかの世界が
ひとつになっている感じがしました。
その辺はMOKさんの言う通りですね。

投稿者 古川泰司 : 2004年09月17日 13:47

トラバありがとうございました。(^-^)/

>ぼくは本を閉じ、その余韻に身を預ける。
soroもそんな感じでした。(^^)

先日設置したsoroのこうさぎのsoraも、とき
どき「アフターダーク」と呟いています。^^

投稿者 soro^^ ~ : 2004年09月17日 20:44

soroさん、こんにちは。
こんなに余韻を楽しめる本ってなかなかないですよね。
2回読んでまる2日たちますが
まだ余韻が身体に残っています。

投稿者 古川泰司 : 2004年09月18日 00:26

古川さん、はじめまして。
TBありがとうございます。
古川さんのとても丁寧なエントリーに、「アフターダーク」をもう1度楽しめる感じがしました。
私の方は、あんまりきちんとした記事にもなっていないのに・・・読んでくださってありがとうございます。

私は、この前「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読んだ所だったので、この「アフター・ダーク」は、物足りなく感じました。お話が、交互に現れるのが似てて・・。

投稿者 ワルツ : 2004年09月19日 00:55

トラックバックありがとうございます。
春樹の文章がとても好きです。
アフターダーク一読後の感想は悪くないですが、今回「美味しそうな描写」が少ないのが少し残念です。

投稿者 はらこ : 2004年09月19日 03:42

ワルツさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
たしかに「ねじまきどり」や「世界の終わり・・」「海辺のカフカ」に比べると
量的に短いから、そう言う点で読後の満足感は少ないかもしれません。
逆に、何回か読んでみると、その世界の深さがしみじみしてきますよ。
ぜひ、再読をお勧めします。

はらこさん、こんにちは
確かにおいしそうな描写は少ないですね。
最近では「海辺のカフカ」のウナギもおいしそうでした。
逆に、抗生物質漬けのチキンとか、おいしくなさそうな描写があったりして。

投稿者 古川泰司 : 2004年09月19日 11:20

トラックバックありがとうございます。
あのラストはホントに素敵ですよね。
あの二人の姉妹が最後にあのようにラストを迎えるとはビックリしました。
村上ワールドは日々進化しているんですね。
すでに次が待ち遠しくなっています。

僕はまだ一回目ですが、これから何度か読み返したいと思っています。

投稿者 こばん : 2004年09月20日 02:01

こんばんは&はじめまして、f丸と申します。このたびはトラバありがとうございます。

感想を拝見させていただきましたが、あのものすごく難解なメタファーにオリジナルな解釈をつけていらして、なるほどなぁと、思いました。

ちなみに、f丸の本名は古川さんと大変似ています。

投稿者 f丸 : 2004年09月20日 02:21

こばんさん、こんにちは
進化する村上ワールド。次回作、ますます楽しみです。(気が早いか・・・)

f丸さん、こんにちは
「難解なメタファー」・・・、たしかに一筋縄ではいかないのが村上ワールド。
一筋縄でいったら、小説を書く意義がない、ということになってしまうのかもしれません。
ともかく、ブロッグのよさは独断と偏見です。その独断と偏見に対してどれくらい多くの人の共感を、あるいは賛同を得ることが出来るか。それがそのブロッグの価値ではないかと思っていますので、これからもどんどん独断と偏見でいきますよ。

投稿者 古川泰司 : 2004年09月21日 09:41

「住む」にコメントして驚かれてしまったようなので気を取り直してこちらに再チャレンジ。TB頂いた時にこちらの文章も拝見していたのですが、古川さんの感想部分がちょっと少なくてどうコメントしたらよいのか解らず「住む」にコメントさせて頂きました。古川さんはこちらの本にとても満足されたようですね。私はかなりがっかりしました。でも次回再読したら何か面白いところが発見できるかもしれません。

投稿者 beebee : 2004年10月01日 00:35

この本については、食い足りない、みたいな感想を持っておられる方が結構多いですね。とくに、村上春樹の本はほとんど読んでいる方に多い感じがします。
たしかに、最近の長編「ねじ巻き鳥・・・」とか「海辺のカフカ」とか、かなり読み応えのある物語でしたから、それに比べて「アフターダーク」は「物語の骨格」よりも「重なるイメージの余韻」を楽しむ小説だと思います。ですから、物語の骨格を楽しみにしている人にとってみれば、読み応えという点では満足のゆくものではないかもしれません。
ただ、僕が書きたかったことは、言葉の持つ「物語を語る」という力の他にあるもう一つの力。それは「イメージの喚起力」とでもいうのでしょうか。その力をこの小説から強く感じたということです。もちろん、今までの村上春樹の小説もイメージの喚起力はあったのですが、今回は作者が意図的に物語の骨格を消すことによって、そのもう一つの言葉の力で世界を構築しようと試みているように見えました。
でも、よく考えてみれば、初期三部作なんかも、物語を語ることよりも、言葉のイメージを重ねてゆくことで物語を消すという小説だったのですよね。
村上春樹はそういう意味では、大きくステップアップして、デビューの頃の世界に戻ってきたのかもしれません。

投稿者 古川泰司 : 2004年10月01日 09:47

古川さん、さっそくTBありがとうございます。
blogを通じて発見したのは「古川さんがこんなに文章が上手かったのか」ということ。お世辞じゃありませんよ。
時に詩人のごとく、時にアナリストのごとく。
会話だけでは見えてこない人柄も浮かんでくるのが実に楽しいところです。ではまた。

投稿者 tad : 2004年10月05日 15:35

tadさん どーも。
また、三鷹(圓)で飲みたいですね。
tadさんのブロッグも僕のところにリンクさせてもらいました。
なんとtadさんはブロッグをふたつやっておられるのです。

投稿者 古川泰司 : 2004年10月05日 16:07

遅くなりましたが、TBありがとうございました。

アフターダークは評判があまりよくないようですね。でも、私は兄弟で仲が良いので、マリの気持ちをいろいろ考えながら読み進むのが面白かったです。

アフターダーク以降、デニーズにチキンサラダがあるのか気になっています。

投稿者 クローカ : 2004年10月05日 20:24

クローカさん こんにちは
デニーズでチキンサラダを探していた人がいました。
読書が人に行動力を与える。ふむふむ。
村上小説はビールが飲みたくなったりスパゲッティが食べたくなったり
人に行動を与えてくれます。

投稿者 古川泰司 : 2004年10月06日 10:55

初めまして。
ハルキストのsunneko11と申します。
古川さんのアフターダークについての記事、
小説の余韻がそのまま広がっている感じがして、心地よかったです。

『ねじまき鳥』や『海辺のカフカ』に比べれば
短いのでしょうが、伝えたいものは
ちゃんと確実に届いているように思いました。
ハルキストとしての贔屓目でしょうかね。。

投稿者 sunneko11 : 2004年10月09日 18:21

sunneko11さん こんにちは。
「短いでしょうが、伝えたいものはちゃんと確実に届いているように思いました。」
ちっとも贔屓目ではないと思いますよ。
その通りだと思います。
考えれば考えるほど、奥の深い小説です。
社会の仕組みと僕らの精神、それらは別々にあるものではなくて一心同体のもの。だからこそ、「心の闇」をみんながどこかでかかえている。そういう現実を受け入れた後で、どうやって前向きに生きるか。そういうメッセージがあふれている小説だと思います。

投稿者 古川泰司 : 2004年10月09日 22:00

 はじめまして。村上といえば龍を連想してしまうりんゆいです。
 春樹先生の作品を読むのはじつに久しぶりなのですが、ぼくが今まで読んだ小説の中でかなり印象に残る作品であったと思います。
 ─思い出は燃料。時間をかけて自分で作った世界はダンボールハウスのようなもの。私らの立っている地面は何かあればすとーんと下まで落ちてしまう。
 まるでぼくの心の中で芽が出ることなく眠っていた言葉を春樹先生が代弁してくれたような感じがして、読み終わったあと口げんか相手をめっためたにしてやったようなすっきり感に覆われました。
 皆さんが勧めるように、時間があればぜひもう一度再読してみたいと思います。そしたらその芽が出ることのない言葉とやらがもっともっと出てくるかもしれないですしね。

投稿者 りんゆい : 2004年10月15日 07:38

りんゆいさん こんにちは
この小説にはひとつの確固たる世界が「存在」していると思います。
そういう確かなものにふれると、人には何らかの痕跡が残る
=それが印象として残るのではないかと思います。
その世界が確固たるものであればあるほど
我々の意識の底に沈んでいた何かを揺さぶり起こしてくれる。
人によっては、それは余計なお世話だったりするのかもしれませんが
言葉にしたかったのになかなか出来なかったくすぶったものが揺り起こされると
それはとても気分のいいもの。カタルシスを呼ぶのでしょう。
りんゆいさんの コメントに共感します。

投稿者 古川泰司 : 2004年10月15日 09:57

カタルシスですか。。。
古川さん。このサイトに訪れてあなたの書き込みを拝見させていただいているうちに、ぜひいろいろと話をしてみたいと思ったものです。
レスポンスをいただいて本当に嬉しかったですよ。
古川さんのおっしゃる意識の底に沈んでいた何か・・・。それが多なかれ少なかれぼくたちは実際の口と心の口との言葉のギャップに苦しみ葛藤し生きていくものなんでしょうね。
少なからずぼくはこのアフターダークでなんらかの「カタルシス」を得れたのではないかと思います。
そしてここでこうして古川さんにレスポンスを送ること自体、なんらかの「カタルシス」を呼ぶものになっているのかもしれません。おもしろいものです。

投稿者 りんゆい : 2004年10月18日 02:31

りんゆい さん
コメントのコメントにコメントを付けていただいて
感激です。コメントは付けるけれどもそのフォローはなかなか出来ないものです。
これからも機会がありましたら覗いてみてください。

投稿者 古川泰司 : 2004年10月19日 21:59

はじめまして、郡 いたちといいます。
アフターダークは学校の図書室から借りて読みました。
今後の展開が気になります。
続編はいつ頃発行されるのでしょうか?
誰か教えてください

投稿者 郡 いたち : 2004年10月28日 10:15

いたちさん こんにちは
続編かあ・・・・あるのかなあ・・・・どうなんだろう・・・・・。
僕はあれで完結していてくれることを願います。
あるいは、「蛍」という短編が「ノルウエイの森」になったような
そういうのならば嬉しいかもしれません。

投稿者 古川泰司 : 2004年10月28日 10:22

はじめまして。今度、村上春樹論を(宿題で)書くことになりました。「ノルウェイの森」など、いろんな著書を読み、少しでもまともなものが書けるように努力します。 何か助言とか頂けたら幸いです。今、「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」を中心に、分析しようと試行錯誤しています。

投稿者 らま : 2004年11月28日 17:19

らまさん、こんにちは。
参考になるかどうかわかりませんが
最近エントリーした、三浦雅士の「村上春樹と柴田元之のもうひとつのアメリカ」という本を読んでみられることをおすすめします。
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」は二つの世界が関係しあってできています。ポイントはその関係ってなんだろう、ということだと思うんですね。その関係について、この本で三浦雅士はわかりやすい言葉で示唆的なことを言っています。

僕のエントリーはこちらから
http://af-site.sub.jp/blog/archives/2004/11/post_146.html

それから、最近の村上春樹、特にこの「アフターダーク」は
サリンジャーの「キャッチャー・・」が大きく影響していると感じます。文学に何が出来るのか、そういうすごい大きな問いかけが村上春樹の仕事にはありますね。
これについては文春新書の「翻訳夜話-2・サリンジャー戦記」を読まれることをおすすめします。その前に村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は読んでおいてくださいね。
良い論文が出来ることを陰ながら応援しています。

投稿者 fuRu : 2004年11月28日 22:16

fuRuさんの助言通りに、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読みました。すごく参考になりました。  専攻が外国語で、まだ、そちらの試験と並行して進めているので、本格的にはまだ取り掛かっていませんが、好いものを書けそうです、本当にありがとうございます。
また、顔を出しに来ると思います。

投稿者 らま : 2004年12月06日 18:21

らまさん
少しはお役に立てて光栄です。
「キャッチャー・・」については、明日にでもエントリーします。
明日は、ジョンレノンの命日。日本時間だと日付は9日になりますが
命日は8日ですからね。
では、明日のお楽しみ。

投稿者 fuRu : 2004年12月07日 11:04

村上春樹とても大切な作家です。
部分部分深く共鳴できるところは相変わらず村上春樹やっぱりいいなって思えるんですが、何かが違ってきているような気がするんです。こぎれいに『恋愛』という包装紙でまとめてしまっているような気がします。
結末に対して私は敢えてこういいたい、チープな恋愛なら始まらなくていい。

投稿者 めめこ : 2004年12月16日 12:08

めめこさん こんにちは
昨日、東京するめ倶楽部の「地球のはぐれ方」を読み終えました。
やっぱり、というか、当たり前なんですが、村上春樹は文章が上手なんですよね。上手というのはテクニックがあるということなんだけれども、「地球のはぐれ方」には、村上春樹がさまざまな文体で短い文章を書いていて、それぞれがとても個性的。こういうのって、テクニックがないとできない。そう考えると、「アンダーグランド」なんかは、きちっと文体が統一されていて、あれだけ長いインタビューでそれをやり遂げるって、これまたすごいテクニックなんだなと、ふり返りながら感動しています。

でも、一方でデビュー作である「風の歌を聴け」とか「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」なんかは、テクニックを意識していないで自然に書いている感じがしますね。そうかんがえると、この「アフターダーク」は、テクニックびんびんに効かせて書いていると思います。

僕は、だから、自然体の村上春樹と最近のテクニシャンの村上春樹というのは、同じ村上春樹でもまったく違う作家だと感じています。同じ土俵で語れないんですね。

僕は、自然体の村上春樹「羊をめぐる冒険」以来、リアルタイムで読んできましたが、やはり、この変化に戸惑いがあり、しばらく離れていた時があります。でも、放っておいた「ねじまき鳥クロニクル」(すでに文庫になっていました)を読んで考え方を変えました。この小説は自然体では書けない、自然体で書くには大変に困難なテーマを扱っていることに深く感動したからです。ようは、テクニックを使うことが良いかどうかではなくて、テクニックを何のために使うのか、ということだと思うんです。そう思って、再び村上春樹にのめり込んでしまいました。

そして、この「アフターダーク」については、村上春樹のテクニックはとても冴えていると思いました。そのテクニックは僕に美しい余韻を残していってくれたからです。

僕にはこの小説は単なる恋愛小説には読めませんでした。何か、僕らのいるこの社会の矛盾の底のほうを描いてくれている、そんな小説です。かなり哲学的な小説だなとも思いました。そのへんをどう読まれるかで、この小説の価値は変わってくるのかもしれませんね。

投稿者 fuRu : 2004年12月16日 15:55

TB返していただいた上コメントまでありがとうございます。とても素敵なブログですね。僕もあんなブログ目指して頑張りたいです。アフターダークの記事も詩的で興味深かったです。僕が書いた感想を膨らませる素晴らしいコメントもありがとうございます。これからもaf_blogアトリエフルカワ チェックさせてもらいます( ̄ー ̄)ニヤリ

投稿者 D氏 : 2004年12月20日 16:28

D氏さん TBとコメントをありがとうございます。
TBだけというよりコメントももらえるほうが何十倍も嬉しいですね。
ブログを拝見させていただきました。21歳とのこと。なんだかうらやましい。
僕も学生の時にブログなるものがあったら、きっとはまっていたに違いない。
ブログは未だ未開の原野。可能性はこれから開拓されるものです。
僕は若い人の新しいアイデアに注目していますよ。

投稿者 fuRu : 2004年12月20日 16:57

僕は大の春樹フアンです。アフターダークも文庫になったら読もうと思っています。いつ頃ですかね?文庫になるの。いい情報があったら、教えてください。
僕は特に新潮社から出る彼の作品が好きです。「ねじまき鳥」とか「ハードボイルド・ワンダランド」とか、ほとんど彼の作品は読んでいます。
共感できるのが大きいですよね。それに奥の深さを感じます。
辻仁成なんかはあたりはずれがあって読むのが途中になっています。それに薄っぺらいし。
「海辺のカフカ」を今、文庫で読んでいますが彼のワンダーランドには驚かされます。
そうすると読み残っているのが文春文庫の短編だけになり、ちょっとさみしいです。
でも「遠い太鼓」など小説以外でもあるのでそれで当分我慢ですね。
村上春樹が読み終わったら漱石ぐらいじゃないと満足できないのでしょか。
春樹好きの私が読むのにお勧めありますか。
初めてですが宜しくお願いします。

投稿者 津田敦史 : 2005年03月13日 19:31

津田敦史さん こんにちは
村上フアンと、こうして出会えるのがブログの良さですね。
「海辺のカフカ」は発売日に買ってきて読んでしまいました。不思議な余韻が残る本です。村上春樹の小説は、それまでは、余韻はあるのですが、その余韻は残らないできれいさっぱり消えてしまうことが特徴だと思っていましたが、この「海辺のカフカ」は違っていました。その余韻の不思議さにつられて三回ほど読んでいます。さらに「少年カフカ」も読みました。
http://af-site.sub.jp/blog/archives/2004/07/post_63.html
それでも、この本のことについては、何も語れません。不思議な本です文庫になったことですし、もう一度読んでみようかとも思っています。津田さんの感想はいかがですか?今度聞かせてください。
さて、お薦めの小説ということですが、ここは日本を離れてアメリカに行きましょう。アメリカの現代文学は村上ワールドがお好きな方にはお勧めです。
ジョン・アービングとかポール・オースター。村上春樹が訳しているのもあります。
柴田元之が訳しているものもお勧め。
僕のブログでの関連記事です。
http://af-site.sub.jp/blog/archives/2004/11/post_146.html
http://af-site.sub.jp/blog/archives/2004/11/post_163.html
http://af-site.sub.jp/blog/archives/2004/12/jd.html
http://af-site.sub.jp/blog/archives/2004/11/post_154.html

>辻仁成なんかはあたりはずれがあって読むのが途中になっています。それに薄っぺらいし。
辻仁成、お嫌いですか?たしかに、作品によって評価がかなり分かれると思いますが、「海峡の光」「母なる凪と父なる時化」という作品を書いたというだけで、僕は脱帽です。

投稿者 fuRu : 2005年03月13日 20:43

どうもありがとうございます。
推薦していただいた。書籍を探してみます。
辻仁成の「サヨナライツカ」幻冬舎・「そこに僕はいた」新潮文庫はいいですよ。
幻滅だったのは「冷静と情熱の間」角川文庫です。やたらオシャレ感をだそうとして深みに欠けるものを指したのです。

投稿者 津田敦史 : 2005年03月13日 21:00

>辻仁成の「サヨナライツカ」幻冬舎・「そこに僕はいた」新潮文庫はいいですよ。
残念ながらどちらも読んでいません。今度、読んでみますね。
僕は「ワイルドフラワー」を、かなりの期待を込めて読み始めたのですが、どうしてもその世界に入ってゆけなくて途中で挫折しました。

投稿者 fuRu : 2005年03月13日 21:26

ただいま「海辺のカフカ」の3/4読み終えました。ナカタさんの存在がとても楽しくて、2部構成でも田村君の動きより、ナカタさんがどうなるのか興味津々です。死んでしまいましたが
彼による名古屋の兄ちゃんの成長ぶりに人は出会いにより人は変われるのだということがとても心を打ちます。
「ハードボイルド~」のような2部構成で、「ねじまき鳥」のような本田さんのような個性的人物、加納クレタ姉妹のような、大島さん、佐伯さん、の不思議な登場人物。
村上春樹の真骨頂の大作であると感じます。
後はクライマックスが楽しみで、僕は読みえた時、どう感じ、再読したくなるのか。
私に何を残してくれるのかワクワクします。
途中経過実況中継でした。

投稿者 津田敦史 : 2005年03月18日 22:32

津田さん おおお。もうすぐ読み終わってしまいますね。
>人は出会いにより人は変われるのだ
そうですね。僕もこの本の重要なテーマの一つは「変わる」ということだと思います。その対局としての「変わらないもの」。それは、死んでしまった青春を今も生き続けている佐伯さんの存在が悲しいくらいに「変わらないもの」として登場してきます。
ラストシーンは賛否両論あると思いますが、僕は感動しました。
星野君、万歳!

投稿者 fuRu : 2005年03月18日 23:25

昨日の晩、読み終えました。
コメントありがとうございます。
最後の星野君、猫、石とも話ができるようになりました。そして不思議な白い物体を殺すことにより完結します。彼はナカタさんのやり遂げられなかったことをなし終えたのですね。
解決してない点が何点かあります。
カフカの血だらけの服はどうしたのでしょう。やはり彼は父を殺したのでしょうか。
それから、森の存在です。森には癒す力があるのか。また兵士たちは太平洋戦争の傷を癒されたのでしょうか。
カーネルサンダースはどうなってしまったのでしょう。
また、村上春樹はカフカに「サウンド・ミュージック」をみせたのは何が目的だったのでしょうか。
どれも些細なことですが、多くの疑問を残して
読者に何かを伝えたかったのでしょうか。
今、すぐに再読は欲しないのですが、読み終えた時、心いや魂に爽やかさを残したのは事実でした。
作者には、もう50歳を超えたのでが、また新しい視点で長編作品を作り続けてほしいなと感じ、一日もはやく「アフターダーク」の文庫化を
講談社に要求したいなと思います。
また、「アフターダーク」の感想をこのサイトで投稿し、古川さんのコメントを頂けることを期待しつつ、今回は終えたいと思います。

投稿者 津田敦史 : 2005年03月19日 08:20

津田さん 読み終えましたね。
>多くの疑問
たしかに、「海辺のカフカ」は疑問だらけですよね。
疑問として問いかけることすら空振りになってしまうような、そんな感じさえあります。それがこの本のテーマと深いつながりを持っているとも言えます。
ぜひチャンスがあったら「少年カフカ」も読んで見てください。
この小説が、以下にいろいろな読み方が出来るのかということにびっくりします。

投稿者 fuRu : 2005年03月19日 14:08

お久しぶりです。津田です。
『アフターダーク』文庫版読了しました。
感想というか。『再生』を主題にした。しっとりとした作品でしたね。
マリとエリ、異なるが姉妹と言う間柄。隔たり。
幼き日のあの親密さに、今は・・・。そして回帰。
自分も兄弟がいて幼き日はとても仲がよく、そう距離と言うか精神的に近かったような気がしますが、今は隔たりがあります。その再生を私もいつの日にかはと思うのですが・・・。
現代都市社会の無機質な状態。あまりにも人間性を欠いたIT社会そんな住人の白川と中国人。
現代の有り様をなにか夜中という時間の中で繰り広げられる薄っぺらい人間関係。
それをしっとりとした文体で現わした今作品は著者の新たなる境地を拓いたのではないでしょうか。
宮部みゆきや東野圭吾では出せない。現実ではあるが非現実の中で物語が繰り広げられていく様をみると是非とも村上春樹の将来にいよいよ期待いたします。
『東京奇譚集』も早く文庫化されますように・・・。
それでは。また。

投稿者 津田敦史 : 2006年09月25日 20:12

津田さん
こちらこそご無沙汰しております。
このところ「アフターダーク」のこの記事へのアクセスが再び上がっていると思ったら
文庫になったんですね。本屋さんでも平積みになっているのを見かけました。
津田さんが言われるように、これまでの村上春樹と、ちょと違う。
それは、たぶん、この小説にある独特な「視線」からではないかと思っています。
そして、確かに新しい境地に向かっている感じがすごくしますよね。
すでにこの「アフターダーク」から2年経っていますから、次の長編はもうすぐなんではないかなと思っています。
どんな世界を描いてくれているのか。とっても、待ち遠しいですね。

投稿者 fuRu : 2006年09月26日 09:18

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