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2005年01月25日

ジャズ・じゃず・Jazz--僕のジャズ原点

[ジャズ--jazz ,音楽--music ]

「ジャズ」という言葉からイメージされる音楽について考えました。
おもうに、やはり、この「ジャズ」という括り方はかなり乱暴ですよね。

c.c.minton.gif

Charlie Christian/Dizzy Gillespie/Thelonius Monk
(邦題:ミントンハウスのチャーリークリスチャン)
amazon
最初に買ったジャズのレコード。
なぜか、今入手できるジャケットは黒地になっています。

小椋佳にはまっていた中学時代から高校に入学して、渋谷陽一に傾倒。ロッキングオンを読みはじめるわけですが、ある日突然、「ジャズ」というものを聴こうと思い立ちます。
「ジャズ」という音楽がこの世のなかにあるのは知っていたわけで、その「ジャズ」というやつを聴いている人たちが一目置かれているのはどうしてなんだろう、とそう思ったからです。そこには、なにかがあるに違いない!
ちなみに、僕の人生の大半はそういう動機で動いています。建築に興味を持ったのも、歌舞伎を観始めたのもおんなじ動機です。

高校の時の僕には行きつけのレコードやさんがありました。
上越市高田の街中にある「世界堂」というレコード屋さん。その本店から離れたところに小さな構えの支店みたいなのがあって、僕はそこに通っていました。
そこの店長さんに「ジャズに興味があるんだけれど、何を聴いたら良いかな」と聴けば
「ジャズっていってもいろいろあるからね・・・」
「年代順に聴いてみたいだけれども。デキシーとかスイングはいいや。」
と、その時に手渡されたレコードが「ミントンハウスのチャーリークリスチャン」。
その後、お小遣いをたずさえては通いましたね。
思いだせる範囲で手渡されたレコードをリストアップしてみます。
(ちなみに、廉価版で探してもらっていました)

・「ミントンハウスのチャーリークリスチャン」--チャーリークリスチャン(1941年)
・「ディズンバード インコンサート」--チャーリーパーカー&ディジィーガレスピー(1945年)
・「バドパウエルの芸術」--バドパウエル(1941年、51年)
・「クールの誕生」--マイルスデイビス(1949年)
・「ソウルビル」--ベンウエブスター(1952年)
・「ジャンゴ」--MJQ(1953年、55年)
・「タル」--タルファーロウ(1956年)
・「ラウンドアバウトミッドナイト」--マイルスデイビス(1956年)
・「アットベイズンストリート」--クリフォードブラウン&マックスローチ+ソニーロリンズ(1956年)
・「サキソフォンコロッサス」--ソニーロリンズ(1956年)
・「ブルーノート第2集」--ソニーロリンズ(1957年)
・「ウエイアウトウエスト」--ソニーロリンズ(1957年)
・「ニュークスタイム」--ソニーロリンズ(1958年)
・「サムシンエルス」--キャノンボールアダレイ(1958年)
・「カインドオブブルー」--マイルスデイビス(1959年)
・「ブルースアンドルーツ」--チャーリーミンガス(1959年)
・「ジャズ来るべきもの」--オーネットコールマン(1958年)
・「ブッカーリトル」--ブッカー・リトル(1960年)
・「アウトトゥーランチ」--エリックドルフィ(1964年)
・「マイファニーヴァレンタイン」--マイルスデイビス(1964年)
・「ライヴ・アット・ヴィレッジヴァンガード」--ジョンコルトレーン(1964年)
・「クルセママ」--ジョンコルトレーン(1967年)
・「ビッチェズブリュー」--マイルスデイビス(1969年)

バップ黎明期からバップ、クール、ハードバップにサードストリーム、モードに、そしてフリー。
今みても、なかなかツボを押さえた選び方をしてもらったと思います。
そして、マイルスの「ビッチェズブリュー」を手渡された時に
「こういうのがジャズなんだよね」と言っていた店長さんの顔を今でも思い出します。

ここにあげたレコードは高校時代に、ほんとにすり切れるくらいに聴きました。今でも、これらのレコードを聴くと、アドリブの部分を口ずさめたりしますから恐ろしい。身体に染みついてるんですね。
だから、僕にとって「ジャズ」というのはここにあげたレコードのことだといっても過言ではないわけです。僕にとっての「ジャズ」の原点ですね。

というわけで、こういうのって誰にでもあるんじゃないでしょうか。
ようするに、抽象的な「ジャズ」なんて言う概念は存在しないし、あったとしてもそういうのってあんまり意味がないのではと思うんですよね。とっても具体的な、例えばマイルスとかロリンズとかのすばらしい演奏が、僕の中に何層にもかさなって出来たイメージとして「ジャズ」というものがある。これは間違いない。そしてそれは、一人一人違ったもの、違っているはずのもの。だけれども、その違いを越えて、ある部分がジャストにかさなること。そのかさなる喜びが僕にとって「ジャズ」について語る喜びなんです。そして、こういう「かさなり」が出来るのも「ジャズ」という音楽に、それなりの長い歴史があるから。そこに時間が培ってきたものがあるからなんだと思います。それが「ジャズ」の魅力ではないでしょうか。聴くひとそれぞれの「ジャズ」が、あなたの「ジャズ」がそこにあるはずです。

ところで、先に挙げたレコードの中で「ビッチェズブリュー」だけが、何だか異質ですね。そして、このレコードだけ、時代を超えていつまでたっても特別なレコードとして僕のなかにあるのも事実です。

その後、僕はこうしたジャズから遠ざかります。
ヤンガルバレクという北欧のサックス奏者やジョンアバークロンビーというギタリストに心引かれてゆくからです。(どちらもECM!)
それについてはまた後日のエントリーで。

「あれ?ビルエヴァンスの名前がないですね。」と思われた方。
あなたは僕のブログを良く読んでくださっている方ですね。
あれだけこのブログにビルエヴァンスのことを書いておきながら・・・。
実は、僕がちゃんとビルエヴァンスを聴き始めたのは大学を卒業してからなのです。
それもまた別のエントリーで書く予定です。


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2005年01月25日 09:45

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コメント

いやいや奇しくも この赤ジャケットが 小生にとっても 最初に買ったJAZZのレコードでした。 しかし なぜこれを選んだのかが 思い出せないのですが・・・
 

投稿者 いのうえ : 2005年01月26日 00:33

いのうえさん こんにちは
一応名盤ということになっていますから
けっこう このレコードを持っている人は多いかと思います。
でも、愛聴盤になるかというと???ですが、僕は好きです。

投稿者 fuRu : 2005年01月26日 10:27

またまた、トラックバックしたくなるfRuさんの記事を見つけてしまいま
した。いえ、このところ連日・・・でしょうか。
今度、わたしとJAZZとの馴れ初めを、ぜひ書いてみたいと思います。
それにしても、千代田(江戸)城といい、JAZZといい、書くことが限りなく
たまっていくような・・・。(^^; 目白文化村を取材している場合じゃない
ような気もしてきました。(爆!)

投稿者 Chichiko Papa : 2005年01月26日 20:07

Chichiko Papaさん こんにちは
目白文化村、面白い!ですね。
http://blog.so-net.ne.jp/chinchiko/archive/c6492
ジャズとの馴れ初めも興味津々であります。
ぜひ、いつかトラックバックしてくださいな。

投稿者 fuRu : 2005年01月26日 20:27

ミントンハウスのチャーリークリスチャンはモダンジャズをどこから線引きするのか、モダンジャズの黎明期に毎夜行われていたジャムセッションの伝説を検証する為のアルバムで、それがジャズ評論家の定説になっているのでしょうね。
僕の持っているCDで唯一のチャーリークリスチャンはベニーグッドマンとの共演盤なので、ジャムセッションに出掛ける前の演奏ですね。ここまで書いたら、何故かベニーグッドマンのベーズンストリート・ブルースを聴きたくなった。でもCDを持っていないのだ。

投稿者 iGa : 2005年01月26日 22:21

iGaさん こんにちは
ベニーグッドマンのためにストラビンスキーが曲を書いていますね。そしてストラビンスキーの指揮で録音もしている。一時期ストラビンスキーのCDを集めていた僕はそのCDを持っています。
あれあれ、また脱線だ。

投稿者 fuRu : 2005年01月27日 09:14

バルトークとも共演してますね。

投稿者 iGa : 2005年01月27日 11:56

このところジャズ付いていますね。

私もチャーリー・クリスチャンが好きです。昔SONY(多分EPIC SONY)から出たレコードで、録音前の音合せから、クリスチャンがそのまま弾き始めて、全員でセッションになる、凄い録音を聞いたことがあります。当時はお金がなく買えなかったです。今では、どのCDだか判らなくなりました。
ベニーグッドとバルトークも大好きで、競演(確か?大昔のレコードなので??)のレコードを持っています。

どうでも良い話でした。

投稿者 maida01 : 2005年01月27日 13:28

iGaさん
maida01さん
たしかに、バルトークも共演していました。持っているCDを調べました。
たぶん同じレコード(CD)だと思います。
バルトークがピアノ、なんとシゲッティがヴァイオリン、そしてベニーグッドマンがクラリネット。1938年の録音です。今考えるとすごい組み合わせですね。

投稿者 fuRu : 2005年01月27日 15:49

fuRuさん、そうなんです。あのレコードは信じられない面子での録音です。ジャズの巨人とクラシックの巨人です。

ブログネタにしないと

投稿者 maida01 : 2005年01月27日 18:31

>ブログネタにしないと

わおっ!
僕にはちと荷が重いテーマですが、いつかは挑戦したいですね。

投稿者 fuRu : 2005年01月29日 12:04

「ミントンハウスのチャーリークリスチャン」がジャズの一枚目っていうのもなんだかすごいですね。今、CDで入手できないのでは? 僕の場合「マイルストーンズ」でした。あと同時に「ジャイアントステップス」。今でも好きです。

投稿者 syo-hyo : 2005年06月18日 23:36

syo-hyoさん こんにちは
コメントありがとうございます。
とても興味深いブログをやられていますね。
文学とジャズは僕のところでも大切なテーマです。

さて、マイルストーンからジャズを聴き始めたという人は多いような気がします。
チャーリークリスチャンからというのは、記事でも書いた通り、そういう伝道師みたいな人がいないとありえないでしょうね。この記事は実はその僕にとっての伝道師に捧げています。
これからもよろしくお願いします。

投稿者 fuRu : 2005年06月19日 23:12

●furuさん
ヤン・ガルバレク (Jan Garbarek):http://music-review.info/article/17376426.html
へのコメントありがとうございました。
ECMの音はそれまでのジャズとは全く異次元な音ばかりでとても興味が惹かれます。全く異質なもののような気がするのに、その一方でどこか吸い込まれるように同期してしまう自分もいる。深遠なるクリスタルクリアのサウンドは遠くて近い音なのかもしりません。

投稿者 日向葵(ponty) : 2006年05月28日 02:37

pontyさん
ECMの音は、ほんと、特色がありますよね。
音質というようなもの、音の肌触りというようなもの
不思議なレーベルです。

投稿者 fuRu : 2006年05月28日 22:09