« 「アンダーグラウンド」--村上 春樹 | メイン | satoyama_House 工事契約 »

2005年03月21日

新シルクロード 第3集--「草原の道 風の民」

[報道・TV--topics ]

新シルクロード第3集「草原の道 風の民」を観た。
僕は天山の北側には行ったことがない。
テレビに映し出される、その草原の風景に大きく心惹かれた。
ユーラシア大陸を西から東へと駆けめぐった遊牧の民。騎馬の軍勢。
その馬のひずめの音はもう聞こえないのだろうか。
じっと、番組を観ながら耳を澄ませる。

うずたかく積まれた石の山。黄金の装飾品、そして仮面、赤い石。草原の石像。
大きな力が「そこ」に存在した、わずかな痕跡。

シルクロード、草原の道を東西につなぐような大きな力。
しかし、そこには遺跡というものはない。
養老孟司さんは「いちばん大事なこと」のなかで
「人間は都市化したがる」ということを言っている。
「都市化したがる」から環境問題は矛盾をかかえるのだというのが養老さんの論旨である。
遺跡とは都市の跡だ。草原の民は「都市」をつくらなかった。
ひょっとしたら、都市化しない人間の在り方が、シルクロードの草原の民を探ることによってあらわれるのではないか。今回のシルクロードを観たあとで、そんなことを考えた。

考えるに、25年前の「シルクロード」が、まだ誰も観たことのない地域の自然と文化を紹介する旅紀行番組だったとすれば、今回の新シルクロードは歴史ロマン的な要素が強くなっていると思う。
観る側も、初回のミイラの発見や二回目の壁画の復元など、とてもドラマチックだった番組が頭のどこかにあるから、無意識に同様のものを期待してしまう。それがいけなかったのだろうか。ちょっと物足りない気分で見終えてしまった。

足跡を残さなかった遊牧民族・騎馬民族について歴史ロマンが語れるわけもない。
先ほどふれた僕の考えも、それはただの考えでしかない。

というわけで、

et-eliotさんがご自身のブログである「「新シルクロード」雑感」で書かれていることに共感するところも多い。
新シルクロード「草原の道 風の民」を視聴して
新シルクロード「草原の道 風の民」を視聴して(その2)

番組が伝えたかったことについてはもう少し考えてみたい。

実はNHK出版から、今回の新シルクロードの撮影・取材記録や、番組内で伝えきれなかった資料がたくさん詰め込まれた本が出ている。


↑「NHKスペシャル 新シルクロード 第1巻 楼蘭 / トルファン」(amazon

この本では、番組の内容をより深く紹介してくれている。
ミイラの写真も壁画の写真もカラー図版で載っている。資料的価値も高いと思う。
ベゼクリク壁画の列国の略奪について、番組ではルコックの言葉を紹介しているが、この本の中ではもう一歩踏み込んで書かれているのも興味深い。

今回放送の「草原の道 風の民」も第二巻として出ると思う。
その本に期待してみよう。

<「新シルクロード」の記事>
○第10集--12月11日「西安 永遠の都
○第9集--11月20日「カシュガル〜千年の路地に詩(うた)が流れる
○第8集--10月16日「カラホト 砂に消えた西夏
○第7集--9月18日「青海 天空をゆく
○第6集--6月19日「敦煌 石窟に死す
○第5集--5月17日「天山南路 ラピスラズリの輝き
○第4集--4月17日「タクラマカン 西域のモナリザ
○第3集--3月20日「草原の道 風の民」
○第2集--2月20日「トルファン 灼熱の大画廊
○第1集--1月2日 「楼蘭 四千年の眠り


※新しいホームページで情報更新中!!

投稿者 furukawa_yasushi : 2005年03月21日 00:59

コメント

fuRu様
私のブログに言及戴き有難うございます。
確かに「新シルクロード」の1回目と2回目は明白なテーマがありましたが、3回目の「草原の道 風の民」はテーマが希薄で物足りないところがあったと思います。
その理由の一つとして、「現在では中国政府の西部大開発の影響もあり遊牧民の生活の近代化が進みつつあるため、取材に多少無理をしているのではなかろうか」との感じも持ちました。もう少し考えて見たいと思います。
その意味では、次回第4回はテーマがはっきりとありそうなので楽しみにしています。

投稿者 et-elipt : 2005年03月22日 20:24

et-elipt さん こんにちは
現代の中国西域で「遊牧民」という言葉自体が生きた言葉であるのか、確かに僕も疑問に思うところがあります。新年に放映された25年目のシルクロードでもふれていましたが、中国政府は遊牧民の定住化をすすめている。国を治める側からすれば、どこにいるんだかわからないというのは困ったことなのでしょう。そういう中国で、遊牧の民の豊かさを取材することは困難なことではないかと容易に推測できます。何せ、価値観が違うんですから。

投稿者 fuRu : 2005年03月22日 23:34

こんばんは、fuRuさん。

「都市化したがる」という養老さんの話はなかなかおもしろいですね。どんどん都市化ばかりしていたら、自然を食いつぶしてしまうのに。開発した場所の再生が、必要なんでしょうね。

さて、新シルクロードですが、私も3回目の放送は少し物足りない感じがしました。古来から続いてきた「遊牧民」の生活がなくなるのは寂しいです。生活している人たちのすぐそばに近代化の波が押し寄せているんでしょうかね。

投稿者 frugel : 2005年03月23日 23:57

frugelさん
>古来から続いてきた「遊牧民」の生活がなくなるのは寂しいです
ほんと、僕もそう思います。
「遊牧民」の生活に我々が生き残る道があるかもしれない。そんなことを思いました。

投稿者 fuRu : 2005年03月24日 17:25

fuRu様
皆さんの感想も参考にさせていただいて、「新シルクロード」雑感:「草原の道 風の民を視聴して(その3)」 にて現在の遊牧民について再度考えて見ました。(3月29日UP)
テーマは「旧シルクロード」と「新シルクロード」の印象の違いについてです。

投稿者 et-eliot : 2005年03月29日 04:32