「火山噴火・動物虐殺・人口爆発」
著:石 弘之 出版:洋泉社 歴史新書
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屋久島には「ウイルソン株」という巨大な杉の切り株があります。とても有名で観光スポットにもなっているのですが、この巨大な杉の木は秀吉が奈良の大仏殿にならって作った方広寺の資材にするために船で運んだのだそうです。
秀吉は他にも多くの寺院造営を推進し、日本中の原生林の巨木をことごとく切り倒してしまったといいます。
これは、秀吉に限ったことではなく、人は木を切り、動物を狩り、自然を食い尽くしながらこの地球に生存しているわけです。
ただ、縄文時代の人間の平均寿命は残された骨から推定して15歳くらいだったとか。世界で一番古い平均寿命の調査と言われる16世紀中頃のロンドン市民の平均寿命も18歳程度。現在の日本の85歳をこえようと言う寿命に比べて、いかに人間が短命だったか。
この急速な長寿命化を考えると、人口の爆発的な増加は紛れもない事実。増える人類のために、居住地は開拓され食糧確保のために森は開墾され畑として耕されることになります。
人類の方からすると自然と共存しているということになるのでしょうが、自然からすると一方的に食つくされている感じ、それも加速度的に、なのではないかと思ったりします。
これにたいして、すこし前に噴火して地球規模の環境への影響が危惧されているアイスランドの氷河の下にあった火山のことを考えますと、人間という存在の自然の驚異に翻弄されている姿も見えてきます。
この本は「環境史」というジャンルの解説書です。「環境史」とは、人が環境に影響を与えてきた歴史と、環境が人に与えてきた歴史の双方を、様々な資料から浮き彫りにして、よりよい明日の生活を考えようという学問だと理解しました。
先程の「ウイルソン株」の事例など豊富な事例が集められていて、とても興味深く読むことができた一冊です。
<蛇足>
先日の樹海ハイキングも、この本を読んでいたから行ってみようかなと思ったのです。富士山の噴火とその後の自然の回復をこの目で見ることが出来ました。